行政書士試験独学5回目「行政法総論」。行政法全般は、つかみどころのない法体系であり「行政法」という法は存在しない。司法試験的な観点からは行政法は「行政法総論」「行政過程論」「行政救済論」に大別され、最後に「行政手段論」。行政書士試験は名前に「行政」がつくぐらいなので、勉強するメーン科目であることは言うまでもない。
さて、「行政法総論」を例えるなら何か?私は「ちゃんこ鍋」だと思う。条文は存在しないくせに各論の集合体。行政に関する基本的な関連法規を規律している。ちゃんこ鍋と断言する理由は、各分野によって仕込みや味が変わり、独特の行政分野を構成するからである。それでいて、行政が行う行為は規律されている。摩訶不思議。例えば、許可・認可をもつ行政主体は〝行政指導〟を出すことも多いが、行政分野は許可・認可だけとは限らない。行政指導を出さない行政主体も存在する。
勉強の本題に入る。基本は憲法と変わらない。基本書を3回通読(やり方は前回述べた)する。通読後、基本書⇔過去問⇔判例六法と行きたいところだが、憲法と違い総論は基本書に出てくる用語の正確な意味を知り、行政法の全体像や骨格を学ばなければ本当に底なし沼にはまる。
3回基本書を通読後、理解を深めるために専門書の購入を勧める(総論だけ通読しても、全体を通して読んでも可)。ズバリ、「行政法」(通称・サクハシ本/弘文堂/カバーを外して使用)。私はこの一択。4年の間に行政不服審査法が大幅に改正されたので二冊買った。2冊目の通読履歴を見返すと、記載だけで9回。多分、それ以上に読み込んだと思う。サクハシ本は行政法の網羅的な専門書なので、一冊持っているだけで心強い。
では、基本書L書に沿って行政法総論の各項目のポイントを述べる。①行政法総論・・・行政法の一般原則につきる(←判例を問われる)。その他は法律による行政の原理を学ぶ②行政法の適用範囲・・・判例のみ(←判例以外学習しない)③公物・・・要注意論点(←私見だが、行政法の試験問題作成者は公物が大好物!?)。用語・判例・記述対策と幅広い④行政組織・・・具体的に覚えるのみ(←助言/人事院・会計検査院・警察庁が法律にどのように規定されている組織か?これを覚えているだけで試験で優位に立てる)⑤行政機関相互の関係・・・代理/委任/専決の比較のみ⑥行政立法・・・法規命令/委任命令/執行命令/行政規則(←特に委任命令が重要【判例】)。
⑦行政行為総説・・・行為そのものが国民の権利義務の法的地位を具体的にどんな形で影響するか?(←この視点で各用語を理解する)⑧行政行為の効力・・・特に公定力/不可争力/自力執行力/不可変更力/違法性の承継/瑕疵の治癒/違法行為の転換(←用語の意味を正確に覚える。判例も要注意)⑨行政裁量・・・憲法との絡みを理解する(←裁量権の逸脱・濫用を押さえる)⑩行政行為の瑕疵・・・瑕疵ある行政行為は何か?(この観点のみで学習)⑪行政行為の取消し・・・取消の意味は?法律の根拠は必要か?取消権者はだれか?の視点が必要⑫行政行為の撤回・・・職権取消と撤回の比較のみ(何が取消にあたり、何が撤回にあたるのか把握する)。
⑬行政行為の附款・・・あまり重要ではないが、た~まに出題されるので用語の意味だけチェック⑭行政契約・行政指導・・・行政指導は後で行政手続法でも出るが、こちらは単元。どちらも判例を中心に勉強する(←そんなに難しくない)⑮行政計画・・・行政裁量に任せられる部分が大(←民主的統制が取れるか?また計画変更につき判例重要)⑯行政上の強制手段⑴・・・種類の把握(←用語/意味/内容の吟味すべてが重要)。代執行の手続・行政上の強制徴収の判例が特に頻出⑰行政上の強制手段⑵・・・即時強制/行政罰/行政刑罰/秩序罰/併科の可否(←すべて最重要/択一or記述問題)⑱行政調査・・・憲法の判例との絡みを覚えればよい。
以上が行政法総論に主な勉強論点。ズラズラと並べたが、アンタ何が言いたいの?という突込みがきそうだが、これが現実。総論はツブシ作業の連続である。「この用語の意味がなんだっけ?」「これには確か重要な判例があったよなぁ」。その都度×2、基本書⇔過去問⇔判例六法+【サクハシ本】の繰り返し。私は過去問を15回繰り返してやっと理解が身についた。
あまりにもツブシ作業がキツイ時は、行政法関連の本を読むことを勧める。気分転換と思考の補足も含めて、参考になるはず。その一部を紹介する。「行政法入門」(藤田宙靖著・有斐閣/読めば裁判官への見方が変わる)、「伊藤真の行政法入門」(日本評論社/伊藤氏の法に対する姿勢が分かる)、「判例から学ぶ憲法・行政法」(川崎将司/小山剛編・法学書院/判例における憲法と行政法の比較が個別判例で理解できる)等々、自分が気に入った書籍を読めば、それなりに行政法とは何かとおぼろげに理解できる。
私は判例主義が濃いので、お薦め書籍は「司法試験/予備試験 ロースクール既修者試験 肢別本2」(辰巳法律研究所)。この書籍は全部で延べ1162肢の判例を紹介する。勧める理由は、基本書に載っていない判例(過去問・予想問題集・試験未出題の判例)の99%を網羅する。さすが、司法試験用。しかし、深入りはしない。アナタはあくまでも行政書士試験の受験者ということを忘れてはいけない。
これで行政法総論はおしまい。次回は行政手続法・行政不服審査法。総論より、ややこしくない。でも、重要論点・法改正・比較ポイントは目白押し。ふんどしを締めて四股を踏み、けいこを続けましょう。 元ブンヤの行政書士