7月に入ると、学習期間も中盤後期に差し掛かっている。基本書は何回通読できましたか?行政書士試験独学7回目は「行政訴訟法(行訴法)・国家賠償法(国賠法)」。行訴法は行政法学習の二大巨頭(一つは総論)のうちの一つで、条文・判例ともに範囲が広く勉強し甲斐がある。国賠法は判例のみで対応できる。行訴法をメーンに解説していく。
行訴法は裁判で違法な行政活動を是正して、違法な行政活動により権利利益を侵害された国民の救済を図る目的で創設された。改めて指摘するが、行手法・行審法・行訴法3法が本当に国民の権利利益に資しているか、私は勉強してみて甚だ疑問に思っている。行政を被告にして〝勝訴〟することなど、明らかな権利侵害がなければ裁判の遡上にも上らない。昨今の日本は国家行政現象が顕著で、国・地方自治体における国民への情報統制が行われ、国民が本来主張できる権利行使の幅が狭くなっているように思われる。そんな視点も頭に入れながら勉強すると、行政法全体の理解度が増す。
基本書の勉強法は同じ。条文素読は必須。L書の項目に従い、各項目のポイントを紹介する。①総説・・・平成16年の法改正を押さえる。後は訴訟類型のみ②取消訴訟総説・・・主観訴訟→抗告訴訟→取消訴訟の流れを理解する。意義・分類(処分/裁決)・訴訟要件(全て重要)③処分性(取消訴訟の対象)・・・処分性(定義→判例の論旨は記述対策【東京都ごみ焼却場事件】)は、判例である程度判断できる(肯定or否定)④原告適格・・・条文9条をしっかり読み込む(⇔行審法には不服申立適格に関する明文の規定はない)法律上保護された利益説に尽きる⑤原告適格の有無・・・肯定/否定の判例を覚える作業⑥その他の訴訟要件・・・狭義の訴えの利益(重要判例ズラリ)、被告適格、裁判管轄、出訴期間、不服申立期間⑦取消訴訟の審理手続⑴・・・取消事由の制限(出題頻出/【自己の法律上の利益に関係のない違法事由】【原処分主義】、審理手続、職権証拠調べ⑧取消訴訟の審理手続⑵・・・どんな場合に併合できるのか?訴訟参加ができる場合とは?第三者の訴訟参加は記述対策が必要?)
⑨執行停止制度・・・行審法の執行停止制度との比較(←これに尽きる)⑩判決・・・判決の種類(事情判決とは?)、判決の効力(既判力・形成力/第三者効・拘束力の意義と意味)⑪無効等確認訴訟・不作為の違法確認訴訟・・・無効等確認訴訟はどんな場合に提起できるのか?不作為の違法確認訴訟の場合は?条文素読を繰り返す⑫義務付け訴訟⑴・・・直接型(1号)と申請型(2号)の比較。直接型は訴訟要件が厳しい(なぜ、厳しいかを考える)⑬義務付け訴訟⑵・・・申請型の訴訟要件は2種類(不作為型・拒否処分型)あり。その違いを分ける。仮の義務付けは、どんな場合にできるのか?⑭差止め訴訟・無名抗告訴訟・・・差止め訴訟の訴訟要件を把握する。仮の差止めの要件を押さえる⑮当事者訴訟・客観訴訟・・・当事者訴訟の定義をしっかりと理解する。形式的/実質的当事者訴訟があり、何がどう違うのか?客観訴訟は具体的な事例を調べる⑯教示制度・・・行審法と何が違うのか?比較する。
以上が行訴法の主な論点。基本書⇔過去問⇔判例六法+【サクハシ本】のスパイラルをイヤ!!というほど繰り返す。行訴法の学習は条文・判例・用語の理解等やることが山ほどあるので、おう吐するほどやりつくす。択一はもちろん、記述問題も出題が一番多いのが行訴法だ。理由は事例が作りやすく、重要な論点もほどよく散らばっているからである(過去15年間で行政法記述問題は行訴法が9問出題された。出題率は6割に達する。ちなみに令和2年度の行政法の記述出題は無効等確認訴訟だった)。
さて、国賠法。国賠法の条文は6条。まずは条文素読を繰り返す。後は判例を具体的に記憶するだけ。難しくない。難しいのは【損失補償】である。憲法29条3項を再確認する。相当補償説か完全補償説か?その比較と記述対策も必要である。
これまで【総論】【行手法】【行審法】【行訴法】の主要論点を指摘してきた。指摘以外にも勉強すべき論点はあると思う。しかし、独学において過去問出題の頻出項目なら学習して当然。時間の許す限り繰り返し×2、繰り返す。これが基本姿勢。後からの肉付け作業は個人差が生じたり、学習の習熟度にも開きが出てくるだろう。しかし、ここで焦ってジャンプ(例・他の基本書や過去問、専門書、判例集に手を出す)することだけは我慢する。そのジャンプをしたことが、不合格につながる(経験者)。
口を酸っぱくして何度も繰り返すが、基本書⇔過去問⇔判例六法だけを行う。必要があれば、専門書・判例集で確認する。例えば、過去問を解いて肢1は×、理由は☐☐。根拠は条文or判例。条文は☐☐法☐条☐項。判例なら判例名(できれば判決年月日まで)。加えるべき解説があれば、それをそらんじる。できるなら、他人に説明できるか試してみるのもアリ。他人に説明できるということは、頭の中で要点が整理され、インプット⇔アウトプットができるいる証左である。つまり、記述の解答ができる。
以上を基本書・過去問解説・判例六法で確認する。そして、すべて条文・判旨・解説が正しければ、その肢は完璧だ。だが、人間は忘れる生き物。1か月後には、誤答する可能性を秘める。そのとき、「なぜ、間違えたのか?」を検討して前回の正答を導き出した脳のサイクルをもう一度引っ張り出す。それが条文か判例か?過去問か?判例六法か?専門書か?判例集か?その他か?確かめてから交通整理するのも自分次第である。
次回は「地方自治法その他」です。はっきり言って地方自治法は完璧に学習することは不可能。気持ちの割り切りが会社法と同様に必要です。ただ、重要ポイントは絞られる。その他が気になるところ。お楽しみに!!
元ブンヤの行政書士