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行政書士試験独学⑩民法物権

 行政書士試験独学10回目「民法物権」。いよいよ物権→債権→親族・家族法へと進む。物権は論点を明確にして、〝繰り返し〟×2勉強すれば克服できる分野だ。今回の民法改正で、物権はあまり関係なかった。

 L書の項目に従い、学習論点と出題されそうな記述対策を見ていこう。【総論】①物権・・・物権相互間の優先的効力と物権と債権の優先的効力のみを押さえる②物権的請求権・・・物権的請求権で何を請求できるのか?それに対応している占有訴権は何か?⑴返還請求権=占有回収の訴え(200条)⑵妨害排除請求権=占有保持の訴え(198条)⑶妨害予防請求権=占有保全の訴え(199条)。要注意は物権的請求権は物権から独立して消滅時効にかからない判例←要チェック)。また物権的請求権の行使は、侵害者の故意・過失は必要ない。

【物権変動】③物権変動・・・176条の物権の設定及び移転を理解する。物権変動の時期は、特定物売買と不特定売買で所有権の移転時期が違う④不動産物権変動・・・177条(基幹条文)の意義を把握する⑤177条の第三者・・・意義を正確に覚える。177条における第三者にあたる例とあたらない例を区別⑥取消と登記・・・取消前の第三者との関係/取消後の第三者との関係⑦解除と登記・・・第三者が登場したタイミングはいつか?対抗関係の177条で処理するのか?他の規定で処理するのか?登記の有無/解除は直接効果説(判例・通説)。解除と登記は何が違うのか?⑧取得時効と登記・・・時効完成前と時効完成後の第三者との関係を比較する。そもそも時効とは、どんな制度なのかを総則の時効のページに戻って確認⑨遺産分割・相続放棄と登記・・・遺産分割前に登記なしで権利主張できるのは自己の持分のみ。相続放棄は絶対効なので→登記なしでも第三者に対抗できる⑩動産物権変動・・・178条の意義・意味を正確に把握する。引渡し方法は4種類。「現実の引渡し」(182条1項)。「簡易の引渡し」(182条2項)→占有改定において、所有者にも占有権が認められる。「占有改定」(183条)→即時取得が成立しない。「指図による占有移転」(184条)→【記述対策/今年出題を予想】例題/譲渡人Aが占有代理人Cによって占有している物をそのまま譲渡する場合、AがCに対して以後、譲受人Bのために占有することを命じ、Bがこれを承諾すると占有が移転する⑪即時取得・・・192条の正確な理解と成立要件。【語呂合わせ/オリジナル】→ドーム球場でモノを即時取得するには「ドー/ム権/取/平穏で公然と無/占する」と覚える。ドーは動産、ム権は前主が無権限者か無権利者、取引は有効な取引行為、平穏で公然と無は平穏・公然・善意・無過失、占するは取得者が占有を取得すること。一丁上がり。それぞれの要件につき判例の有無と適用か不適用かを確実に覚える。盗品・遺失物の特例も択一では最重要知識(記述はない/平成15年度出題済)。

【占有権】⑫占有権・・・占有権とは、「仮の権利保護」を認める制度。理由を考える。占有権の効力を覚える⑬占有訴権・・・「占有保持の訴え(198条)」=妨害排除請求権に対応「占有保全の訴え(199条)」=妨害予防請求権に対応「占有回収の訴え(200条)」=返還請求権に対応する。

【所有権】⑭所有権・・・承継取得と原始取得の違い。相隣関係も注意が必要⑮共有・・・共有物の保存・管理・変更は必須(令和元年度記述出題済)。共有物の分割も大切。

【用益物権】⑯用益物権(地上権・永小作権・地役権)・・・4つの権利の中で地役権が最重要。承役地、要役地、付従性、随伴性の用語の定義を正確に覚える。

【担保物権】⑰担保物権・・・法定担保物権と約定担保物権あり。通有性と効力を把握する⑱留置権・・・295条を素読。成立要件はお得意の【語呂合わせ/オリジナル】。ちょっと汚いが、小学生時代の〇虫検査提出を思い出し、留置権は「けん・弁・占・法」(けん・べん・せん・ぽう)と覚える。けんは債権と目的物の間に牽連関係があること、弁は債権が弁済期にあること、占は留置権者が他人物を占有していること、法は占有が不法行為で始まったことでないこと。留置権で重要なことは、同時履行の抗弁権との比較である。留置権は今年(物権で出るとしたら)の記述の大本命!!と予想する。択一対策では、効力・留置権の管理・留置権の消滅原因⑲先取特権・・・過去問のみ⑳質権・・・342条素読のみ㉑動産質・不動産質・債権質・・・無視。もし出題されたら、🙇

【抵当権】①抵当権(抵当権のみ担保物権から独立して紹介)・・・369条(基幹条文)を正確に記憶する。詳しい解説等は基本書で確認。*論点/「物上保証人は債務を負担しておらず、債権者が物上保証人に請求することができないのはなぜか?」の答えを導き出す②抵当権の効力・侵害・・・被担保債権の範囲、抵当権の効力の及ぶ目的物の範囲、物上代位性(肯定・否定)。抵当権の侵害は最重要項目の一つ。抵当権に基づく妨害排除請求に関する判例(最判平17・3・10)は、記述対策が絶対に欠かせない③法定地上権・・・388条素読。成立要件4つをしっかり理解する。助言は二つ。⑴法定地上権も、第三者に対抗するには登記が必要⑵大原則として、土地が共有の場合には法定地上権が成立しない。成立要件❶抵当権設定時に土地の上に建物が存在していたケースの判例が三つ➋抵当権設定時同一人がその土地と建物を所有していたケースの判例が八つ。判例ごとに事例として図・イラストを自分で描いて出題の際にイメージと解答をすり合わせるようにする④抵当権と利用権・・・一括競売(但書き注意)。同意による賃貸借の対抗(記述対策必須)。建物賃借人のための明渡猶予制度(395条1項)、395条2項は記述対策(問題を自分で作成)、第三取得者の保護は択一対策のみ(代価弁済と抵当権消滅請求は平成23年度記述出題済)⑤抵当権の処分・・・抵当権の時効による消滅(択一対策)⑥根抵当権・・・根抵当権に関し民法改正前はガン無視していた。理由はややこしいから。しかし民法改正で比較が必要になるので、根抵当権に関する各条文素読は必須⑦譲渡担保・所有権留保・・・譲渡担保は民法に規定のない非典型担保。重要判例が三つあり、これを押さえる。近年出題が頻発している。要注意!。

 以上が「物権」の主な学習論点である。くどいようだが、基本書⇔過去問⇔判例六法の繰り返し。記述問題作成(答えも作成)自体に論点違い・答え間違いがあれば、その都度修正する作業を怠らない。また記述も択一も解いてみて「間違えたぁ」といって、すぐに答えを見ない。自分で考え理解する脳の作業時間を奪うからである。なぜ間違えたのか?をトコトンつき詰めてから入門書→専門書→最後の保険→判例集とたどる。

 民法を勉強するうえで重要なことはイメージである。できれば設問ごとに図・イラストを不要な紙(チラシ等)に書き込み問題を解く。本番では、相関図等を書く時間の余裕はないので、本番前までに脳内イメージを整えておく。脳内イメージの足りない部分のみ、問題用紙に書く。そして各肢を解いていき、×(不正解)or〇(正解)を判断する。私は使用済みコピー用紙の裏に図を書き込み、答え合わせと解説の確認等を行ったらすぐに紙をポイ捨てしていた。理由は後で紙を見ても本番では何の役にも立たないからである。脳内イメージの練習だけを行う。

 民法を勉強する前に指摘したことを覚えていますか?パンデクテン方式です。物権は総則につながり、債権とも密接な関係性をもつ重要な役割を担っているのです。物権はモノに対する権利です。では次回の「債権」は〇に対する権利です。〇に入る字は何ですか?債権は勉強すればするほど民法の本質を理解できる。

                           元ブンヤの行政書士